◆ギムレットには早すぎる……

先日、かなり深い時間まで飲んでいた。
さすがに大好きなヒューガルデンも飽きてきて、

「なにか、夏らしいのはないかな?」

とマスターに尋ねた。

「夏らしい……ですか?」

「うん。……モヒートは、まだなんだよね?」

「そうですね」

「じゃあ、ギムレット」

「ギムレットですか?」

「うん。小説に出てきたんだよ。夏の飲み物だって。
レイモンド・チャンドラーって人のハードボイルド小説なんだけど」

「何て言うタイトルですか?」

「忘れた」

しかし、いまは便利な時代だ。スマホですぐに検索できる。

「<The Long Goodbye>ですか?」

スマホを見ながらマスターが言った。

「あ、そうそう。長いお別れ」

「ギムレットには早すぎるっていうセリフが有名らしいですよ」

「そうか……そうだったかな……全然覚えてないや」

ネット上にはあらすじも載っていたが、読んでも全然印象がない。
間違いなく、大学生のころ読んだハズなんだが……。

まあ、それはともかく、その夜(というか朝)は、ギムレットで乾杯した。
たまにはショートのカクテルもいいなあ、と再認識した。

ところで、やはり小説の内容が気になって、
電子書籍で買ってみた。本当に便利な時代だ。

しかも、昔読んだときは「清水俊二」の翻訳だったが、
いまは「村上春樹」版があるという。早速「村上」版を買ってみた。

面白かったら、またギムレットを飲もう。
もちろん「GOLEM」でね。